原発性硬化性胆管炎(PSC)

肝内、肝外の胆管が進行性に硬化・狭窄を来たし、胆汁の流出障害を起こす疾患です。このうち、原因が明らかでないものが原発性硬化性胆管炎と呼ばれます。

1. 症状

 初期は大多数が無症状ですが、進行すると、黄疸、かゆみ、疲労感、体重減少、発熱などの症状が出現し、最終的には胆汁うっ滞により肝不全に至ります。

2. 原因・病態

 胆管に慢性炎症を引き起こす原因不明の疾患です。国内の総患者数は約1200人程度と推計されており、国の難病対策として制定される特定疾患となっています。男女比はおよそ3:2であり、好発年齢は20歳代と60歳代にピークがあります。炎症性腸疾患(多くは潰瘍性大腸炎)の合併が4割程度に見られるのが大きな特徴です。進行性に悪化し、約10-15年で肝不全に至ります。

3. 検査・診断の方法

 血液検査では、アルカリホスファターゼ値やビリルビン値の上昇がないか調べます。MRIで胆管の全体像をとらえ、診断の助けとします(図1)。精密検査として、内視鏡を用いて直接胆管に造影剤を注入して、胆管が数珠状に狭窄していないかを調べることがあります。また体の外から肝臓に針を刺して組織を採り(肝生検)、肝臓内の胆管に特徴的な変化が出ていないか顕微鏡で調べます。原発性硬化性胆管炎に特徴的な病理所見というのは肝生検では実際にはあまり捉えられないことが多いのですが、肝生検は他の肝臓疾患を鑑別するうえで役立つ場合があり、当科でもできる限り実施するようにしています。

4. 治療の方法

 内科治療としては、ウルソデオキシコール酸などの投薬により、アルカリホスファターゼ値などの改善を図ります。胆管の狭窄に対する内視鏡治療として、狭窄部を風船で拡張したり、胆汁が流れるようにステントを入れることがあります。また胆汁流出障害により胆管に小さな結石や泥状物が貯留しやすく、これらを内視鏡的に除去することが肝機能の改善に役立つ場合があります(図2)。しかしながら、きわめて進行した場合は残念ながら肝移植以外の治療はないのが実情です。

図1:原発性硬化性胆管炎の胆管像(MRI)左が原発性硬化性胆管炎症例の胆管。右の正常例と比較して肝内胆管は高度に狭窄、分断されていることが分かります。図1:原発性硬化性胆管炎の胆管像(MRI)
左が原発性硬化性胆管炎症例の胆管。右の正常例と比較して肝内胆管は高度に狭窄、分断されていることが分かります。
図2:原発性硬化性胆管炎に対する内視鏡治療 胆管内から結石が十二指腸へ排出されました。図2:原発性硬化性胆管炎に対する内視鏡治療
胆管内から結石が十二指腸へ排出されました。

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