急性膵炎

何らかの原因で膵臓に炎症が生じることを膵炎といいます。

症 状

急な上腹部や背中の痛みや吐き気が見られ、時に黄疸、熱などを伴うこともあります。

原因・病態

膵液に含まれる消化酵素により自らの膵臓が消化されてしまった状態が急性膵炎です。日本での発症は年々増加傾向にあります。膵炎になる人は、女性は70歳代、男性は50歳代の方が多く、比較的男性に多い傾向があります。

膵臓には大きくわけて二つの働きがあります。一つはインスリンやグルカゴンという体内の血糖値を調節する「ホルモン」を作る内分泌という働きです。もう一つは膵液という「消化酵素」を作る外分泌という働きです。膵液は膵管という管を通って十二指腸に分泌され、はじめて消化酵素として活性化し、食べ物を消化します。何らかの原因で、膵液が膵内で活性化されると、膵臓が消化され、急性膵炎を生じます。

急性膵炎の原因として多いのは、アルコールと胆石です。その他、薬によるもの、内視鏡的逆行性膵胆管造影検査に伴うもの、先天的な膵臓の形の異常(膵管癒合不全)、脂質異常症(中性脂肪が高い)などが原因の場合もありますが、原因がわからない「特発性」と診断される方もいらっしゃいます。また慢性膵炎を患っている方の症状が急激に悪くなり、急性膵炎を起こす場合もあります。これを慢性膵炎の急性増悪といい、急性膵炎に準じて治療を行います。(慢性膵炎については、こちらをご参考にしてください)

検査・診断の方法

ⅰ) 上腹部痛がある場合、ⅱ) 血液検査でアミラーゼやリパーゼなどの膵臓の消化酵素の値が上昇している場合、ⅲ) CTなどの画像検査で膵臓に炎症がある場合に、急性膵炎と診断します。

1) 血液検査:膵臓の消化酵素であるアミラーゼやリパーゼなどがしばしば上昇します。 また白血球数やCRPなど体内の炎症の強さを示す値が高値になることがあります。胆石による膵炎の場合には、肝胆道系酵素(AST, ALT, γGTP, ALP, T.Bil)が高値となる場合もあります。
2) 画像検査:超音波検査・CTなど画像診断が行われます。膵臓に炎症が起きた結果、膵臓が腫れたり、周囲に液体が貯留している所見が見られます。また重症例では膵臓の壊死や感染を伴うこともあります。
3)重症度の判定:厚生労働省の定められた基準などに基づき、診察所見、血液検査や画像検査などにより重症度を判定します。診断時のみならず、治療経過中も、重症化のサインが見られないか、繰り返し状態を評価しながら、治療にあたります。

治 療

治療の中心は点滴による循環動態の維持です。膵炎の炎症が全身に及ぶことで、全身の血管内を循環する水分の減少(血管透過性亢進による血管内脱水)を生じ、ひいては臓器障害を来たします。そのため尿量などを確認しながら、大量の点滴を行います。状況に応じて、膵臓の酵素を押さえる薬(膵酵素阻害剤)の点滴や、膵臓の周囲の感染を防ぐ目的で、抗生物質を使用します。

重症急性膵炎の場合、炎症が全身に波及し、腎臓、肺など他の機能低下(多臓器不全)が生じることがあります。人工呼吸器や血液透析を含めた集中治療室での治療が必要になることもあります。

なかでも壊死性膵炎や感染性膵壊死といって、膵臓やその周囲組織に壊死を起こして感染を伴った場合、非常に治療に難渋します。つまり壊死した膵臓や周囲の膿を取り除く処置が必要になることがあります。以前は開腹手術が行われ、お腹のなかを洗浄するという治療が一般的でした。しかし多臓器不全となった患者さんに開腹手術をするのは危険を伴い、死亡率も高い治療法でした。近年、内視鏡を用いて膿や壊死物質を取り除くという方法が確立されつつあります。内視鏡治療は開腹手術に比べて患者さんの体に対する負担が軽く、予後がよいという報告がされています。当科では、外科や救急部の先生方と連携して、このような治療を積極的に行っています。

当科の件数・治療成績

厚生労働省の発表しているデータでは、軽症の膵炎の患者さんの死亡率が0.2%であるのに対し、重症膵炎の死亡率は8%と非常に高値です。1980年代の重症膵炎の死亡率は30%程度でしたので、近年の医療の進歩により重症の急性膵炎の予後は良くなってきていますが、それでも10人に1人が命を落とす重篤な病気です。

我々は、厚生労働省や学会などが作成した「急性膵炎の診療ガイドライン」を参考にしながら、最新の研究などで得られた知見も含め、個々の患者さんにとって最適な治療を提供しています。

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